今年63歳になる母が「パートを辞めて早めに年金をもらう」とのこと。月9万円の場合「85歳を過ぎると損」と聞きましたが、実際どれだけの差になるのでしょうか?
年金を早めに受け取ると、収入を得られるメリットがある一方、1ヶ月あたりの支給額が減るデメリットがあることをご存じの人も多いでしょう。実際、繰上げ受給を選ぶとしばらくの間は、65歳から受け取る場合に比べて総受給額は多くなりますが、一定期間を過ぎると逆転する可能性があります。では、どの時点で損得が変わるのでしょうか?   本記事では、本来の年金額よりも減額された月9万円を63歳から受け取る場合と、本来の年金額を65歳から受け取る場合について、85歳まで生きたときにどちらが得か損かを、具体的に比較します。

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年金の繰上げ受給とは?

老齢年金の受給は基本的に65歳から始まりますが、「繰上げ受給」を利用すると、60歳からでも受け取りを開始することができます。ただし、早く受け取る代わりに、繰上げする期間に応じて1ヶ月ごとに0.4%ずつ支給額が減額され、60歳から受け取る場合には最大で24%の減額となります。この減額は一生続くため、長期間受け取る場合には総額で損をする可能性があります。
 
図表1のとおり、例えば、65歳で月10万円の年金を受け取る予定の場合、60歳からの受給に繰り上げると月7万6000円(10万円×76%)しか受け取れないことが分かります。一方、5年間早く受け取れるため、短期間では有利と考えられます。
 
図表1

日本年金機構 年金の繰上げ受給 より筆者作成
 

63歳から繰上げ受給と65歳開始の70歳時点での比較

63歳で繰上げ受給を選択し、本来の受給額から9.6%減額された年金額が月9万円だった場合、65歳から受け取り始めた場合の満額の年金額は、月約10万円だったことになります。
 
具体的に70歳時点での累計受給額を比較すると、次の通りです。
 
・63歳から繰上げ受給
月額9万円×12ヶ月×7年=756万円
 
・65歳から受給開始
月額約10万円×12ヶ月×5年=約600万円
 
この時点では、繰上げ受給を選んだほうが約156万円多く受け取れます。
 

63歳から繰上げ受給と65歳開始の80歳時点での比較