
▼「生活保護」の受給要件とは? 親族への扶養照会は必須なの?
生活保護と扶養義務
日本では、親や子ども、兄弟姉妹といった親族に対しての扶養義務があります。これは民法で定められており、親族が経済的に困窮している場合、可能な範囲でその生活を支える義務があるというものです。ただし、あくまでも「可能な範囲」というのがポイントで、自己の生活に優先すべきというものではありません。
一方で、生活保護は国が最低限度の生活を保障する制度です。親族による扶養は生活保護より優先されると定められていますが、先に述べたように、扶養義務がある親族全員が必ず経済的支援をしなければならないわけではありません。支援が可能かどうかは、それぞれの収入や生活状況によって判断されます。
就職後に扶養義務を果たす必要があるか
就職して安定した収入を得られるようになると、理論上は親族を扶養できると判断される可能性があります。しかし、実際にそう判断されることはほとんどないと考えてよいでしょう。
大学卒業後に就職すると、初年度の年収は300万円程度から350万円程度と想定されます。その他の資産状況にもよりますが、これは「親族を容易に扶養できるほど余裕がある」とは言い切れない年収です。
仮に、その後400万円、500万円、600万円と年収が増えていったとしても、扶養義務が課されることはほとんどないと考えられます。先に述べたとおり、扶養義務よりも自身の生活が優先されるためです。
また、親族関係が疎遠である場合や、過去に争いが起こったなど深刻な事情がある場合は、扶養を拒否することも可能です。
なお、自分が扶養しなかったため親族が生活保護を受けることになったとしても、何か罰則があるわけではありません。金銭的な支援を強く求められたとしても、負担を強制されることは基本的にありません。