こうした問題点を解消するために、厚生労働省では制度の見直しが検討されていて、以下の3つの案が提示されています。
<完全撤廃案>
在職老齢年金制度をなくし、働き続けても年金を減額しないという案です。この案は、支給停止がなくなるため、本来年金に加入して保険料を支払った分はすべて受け取れるべきだという考えに基づいています(4500億円の財源が必要)。
<基準額引き上げ案(71万円)>
年金が減額される基準額を、71万円に引き上げようという案です。これにより多くの高齢者が減額に苦しむことなく、現役のように働き続けることができるとされています(2900億円の財源が必要)。
<基準額引き上げ案(62万円)>
基準額を62万円に引き上げることで、一定の緩和を目指す案です。これにより、中間層の高齢労働者が経済的に恩恵を受けやすくするとされています(1600億円の財源が必要)。
見直しには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
・働く意欲が高まる
・年金保険料を納めた分をしっかり受け取れる
・収入による年金減額という不公平感が解消される
・年金財政の支出が増える(年間1600~4500億円程度)
・将来世代の年金給付水準に影響が出る可能性
・高所得者に有利な改正となる
今後の見通しは?
2024年12月、自民党政務調査会は「見直しにともなって年金財政からの支出が増加し、将来世代の給付水準に影響がおよぶ可能性があることから、将来的な制度廃止を視野に入れながら、まずは基準額の引き上げを行うべき」という提言をまとめました(※2)。
完全な制度廃止には大きな財源が必要なため、自民党の提言のように段階的な見直しが行われる見込みです。まずは、基準額の引き上げからスタートし、その影響を見ながら、将来的な制度廃止を検討していくことになりそうです。