Aさんの場合、老後の住居費が不要であれば、2000万円ではなく720万円程度の準備で済む可能性があります。実際は、最近の物価高騰傾向による生活費や、加齢による介護サービスを委託する必要の発生など、医療費の増加を考慮する必要がありますが、過剰に心配する必要はないかもしれません。
備えるべきリスクについて
ただし、経済的に不安のない老後を送るために備えておいたほうが望ましいリスクについては、以下の項目があります。
・医療・介護費用:加齢とともに医療費や介護費用が増える可能性があります。
・年金以外の収入の減少:公的年金の価値が物価高騰に追い付かなくなる、あるいは定年後の再雇用時期が過ぎて、不足部分が発生する可能性があります。
・定年を迎え、時間が自由になったときにライフスタイルが変化し、趣味や旅行のための費用が思いのほか増える可能性も考慮しておきましょう。
望ましい対策
Aさんの場合、「2000万円を用意しなければならない」という切羽詰まった状況ではなく、Aさん自身の生活スタイルに合った準備を進めるのがよいでしょう。以下で、具体的な手順を紹介します。
1. 現在の生活費の把握:毎月の支出額を確認し、老後の生活費をイメージします。
2. 公的年金の確認:「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で将来の年金受給額を確認しましょう。
3. 無理のない貯蓄計画:例えば、今のうちから毎月1~2万円程度を積み立てていくようにすると、ストレスなく老後資金の大きな備えになります。
健康や仕事を続けられるうちは、短時間・短期間でも働き続けることで収入を補う選択肢も検討するとよいでしょう。
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者
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