出典:総務省「令和5年版 救急・救助の現況」を基に筆者作成
これらのデータから、救急車の要請件数が増加しているものの、約半数の方は軽症であることが分かります。
救急車の要請件数が多いと、管轄の救急隊の出動が重なり、遠い場所から救急車を出動させることになります。遠い場所からの出動は到着まで時間がかかるため、助かるはずの命が助からないといった事態にもなりかねないでしょう。
救急車の有料化が生活にもたらす影響
救急車の有料化が進むと、以下のような影響があると考えられます。
1つ目の影響として、救急車の出動件数が減少することが考えられます。お金がかかるため、「取りあえず救急車を呼ぼう」と考える方の減少が期待できるでしょう。実際に、三重県で2024年6月1日〜9月30日の3ヶ月間にわたり行われたモニタリングでは、以下の結果が出ました。
●救急搬送され、入院しなかった方の割合が減少した
●軽症者の搬送割合が6.5%減少した
軽症者が救急車を利用する件数が少なくなることで、緊急性の高い方に、救急車が迅速に到着できるようになります。
一方で、有料化してしまうと本当に救急車が必要な方が、費用を理由に要請をためらう可能性があります。要請をためらうと、その間に症状が悪化し、手遅れになってしまうかもしれません。
2つ目の影響として、経済的な負担により、平等に医療を提供できなくなる可能性が考えられます。救急車の有料化は、低所得者にとっては大きな負担となります。高所得者は救急車を利用できるが、低所得者は利用したくてもできないという状況になった場合、公平性の問題が生じるかもしれません。
救急車の有料化によって、われわれの生活に影響があるだけでなく、公平性などの問題が生じる可能性もあるでしょう。