103万円の壁については「撤廃する」あるいは「なくす」と言われることもあります。しかし正確には、控除の金額を見直して103万円から引き上げることであり、結果的には住民税も減税になるでしょう。
 
とくに基礎控除が拡充されれば、給与所得者だけでなく、所得税を納めている自営業者・フリーランスなどにも効果がおよびます。
 
一方、そこで気になるのは図表2のとおり、所得税に関しては累進課税で高額所得者ほど税率が高いことです。そのため、控除が引き上げられると高額所得者ほど所得税の減税額が大きくなります。
 
図表2

図表2

国税庁 No.2260 所得税の税率
 
実際にどれくらい所得税が減るのか、1つの例として年収400万円の人と年収800万円の人を比較してみましょう。計算を分かりやすくするため、復興特別所得税は考慮せず、そのほかの控除は社会保険料のみ年収の14%として加算します。
 
この仮定を基にした計算では、図表3のとおり、年収400万円の人の課税所得金額は400万円-48万円-124万円-56万円=172万円となるため、所得税率は5%です。仮に「壁」が見直され、基礎控除が50万円引き上げられると、減税額は50万円×税率5%=2万5000円となります。
 
同様の計算で年収800万円の人の課税所得金額は800万円-48万円-190万円-112万円=450万円となり所得税率は20%、減税額は50万円×税率20%=10万円です。
 
図表3

年収 所得控除 課税
所得
金額
税率 現在の
所得税額
基礎控除が
50万円増えた
場合の減税額
減税率
400万円 ・基礎控除48万円
・給与所得控除
400万円×20%+44万円=124万円
・社会保険料控除
400万円×14%=56万円
合計228万円
172万円 5% 172万円×5%
=8万6000円
50万円×5%
=2万5000円
2万5000円÷
8万6000円=約29%
800万円 ・基礎控除48万円
・給与所得控除
800万円×10%+110万円=190万円
・社会保険料控除
800万円×14%=112万円
合計350万円
450万円 20% 450万円×20%
-42万7500円
=47万2500円
50万円×20%
=10万円
10万円÷47万2500円
=約21%