なかには、「見える化」したことで、課題が浮き彫りになるケースもあります。
これまで賃貸で暮らしてきた方が、退職後も家賃を払い続けることに対して、その累計額に驚いたという話も聞きますし、また年金収入のなかから賃料を払うと赤字になるという話も聞きます。
例えば、家賃10万円とすると年間120万円、60歳から100歳まで40年間支払うとすると4800万円にもなります。収入が年金15万円とした場合、10万円の家賃を払うと残り5万円で食費や日用品、光熱費や通信費を捻出する必要があります。「これでは豊かな老後生活は見込めない」「そもそも生活が成り立たない」と落胆する方も見られます。
退職後の生活は、長期的目線で全体像を把握することがポイントといえるでしょう。年金収入だけで見れば家計収入はマイナス(赤字)かもしれません。だからこそ、前述の退職金やこれまで積み上げてきた資産をふまえて考えてみてください。
そのうえで、住むエリアや間取り、築年数などをふまえて物件購入や別の賃貸住宅への転居も選択肢となります。
退職金を原資に自宅購入の選択肢
現役時代は、転勤の可能性や通勤時間を考え、身軽でいられるよう住宅購入を控えていたという人も少なくないでしょう。
しかし、「退職後は好きなエリアでのんびり過ごしたい」「趣味の時間を楽しみたい」「いつまで生きるかわからないこそ、初期投資で、その後のお金の心配はしたくない」という方には、退職金を原資として物件購入をするという選択肢も有効です。
見守りや高齢者施設も視野に賃貸継続の選択肢
2024年6月より住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)が改正され、高齢であることを理由に入居を断らない市場環境の整備が進められています。
また、同法では、居住サポート住宅の認定制度が創設され、安否確認や見守り、適切な福祉サービスへのつなぎを行うサービスなど、独り暮らしでも安心の環境が構築されつつあります。
身体的状況をふまえつつ、そのときどきの適切な住まいを選べるのは、賃貸住まいのメリットかもしれません。