”もしものとき“は同居中の長女に自宅を「相続」させたいです。独立した長男もいますが、遺言に「全財産を長女に相続させる」と書いても問題ありませんか?
遺言に「全財産を長女に相続させる」と記載があっても、長男から遺留分を主張されると金銭で対応するため、換金が容易な資産を用意しておく必要があります。その準備として、生命保険への加入が有益です。

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遺留分とは

遺留分とは、被相続人の遺産のうち、兄弟姉妹を除く法定相続人に対して保障される、最低限確保できる相続分であり、被相続人の遺言や生前の贈与によっても奪うことはできません。具体的には、遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は法定相続分の3分の1、これ以外の場合は法定相続分の2分の1です(民法1042条)。
 
遺留分を主張できる人(遺留分権利者)は、被相続人の配偶者、子およびその代襲相続人、子およびその代襲相続人がいなければ直系尊属(父母、祖父母など)です。兄弟姉妹は、相続人となる場合であっても、遺留分はありませんので留意してください。
 
遺留分を侵害された遺留分権利者は、受贈者や受遺者に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求、民法1046条)。遺留分侵害額請求は、裁判上の請求による必要はありません。相手方へ意思表示の到達を証明できる配達証明付内容証明郵便を送付しましょう(民法97条1項)。
 
この請求は、遺留分権利者が相続開始および遺留分を侵害する贈与、または遺贈があったことを知った日から1年間、相続開始から10年間が経過した場合には遺留分侵害額請求権は時効により消滅し、行使できなくなります(民法1048条)。
 
遺留分は、金銭の支払いで解決します(1046条第1項)。しかし、金銭を直ちには準備できない受遺者または受贈者のため、受遺者等の請求により裁判所は金銭債務の全部または一部の支払いにつき、相当の期限を許与できます(民法1047条1項・5項)。
 

生命保険の活用