その税金対策は本当に「節税」になっていますか? 相続税で損しないために親子がやるべきこととは?
両親から子への相続に関して、両親の一方、例えば父親が先に亡くなり相続税を多く納めた経験などがあると、母が亡くなる際にはしっかり節税対策をして、なるべく税金を少なくしたい、と考えるケースがあるようです。   本記事では、そういう人こそ、まずやってほしいことを解説するので、ぜひ参考にしてください。

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母親の財産の書き出し

相続について筆者のもとに相談に来る人のなかには、「節税対策をしたいのでどんなことをしたらよいか教えてください」と焦っている人もいます。事情を聞くと、先立った父親の相続時に相続税の支払いが大変だったので、母親からの相続のときは納めたくない、という内容です。
 
このような考えをもっている人は、例えば保険会社から「相続税に係る課税財産を非課税とできる制度」(※)の説明を受けると、非課税の限度額の限度まで、保険商品を購入してしまうといった行動をとってしまったりします。もちろん、この制度は節税対策にはなります。
 
しかし、この制度を使う前にしてほしいことがあります。それが、「相続の対象となりそうな財産の書き出し」です。母親名義の預貯金や金融資産、不動産などの一覧表を作ります。目的は、母親の今後の生活費は足りるのか、さらには相続税額が生じるのかを把握するためです。
 
一覧表の作り方は簡単で、図表1のように表にまとめておくと便利です。初めて作るときは少し大変ですが、その後の更新は、毎年金額を訂正するだけでよいので、初回は頑張ってやってみましょう。
 
図表1

図表1

筆者作成
 

母親の今後の生活費は足りるのか

では、この一覧表を使って分析していきましょう。
 
まず1つ目は、母親の今後の生活費は足りるのか、を考えてみます。
 
母親の年齢が80歳、毎月の収入が年金12万円、毎月の生活費や医療費、孫へのお年玉やお小遣いなどを合わせると、支出は平均して20万円と仮定する場合、毎月8万円が不足していて、年間96万円を取り崩すことになります。つまり、毎年100万円近くを預貯金から使っていかなければなりません。
 
では、100歳まで生きると仮定すると、残り20年間で2000万円が必要となります。そのため図表1のうち普通預金と定期預金は、ほぼ日常の生活で消えてしまうと考えられます。
 
そのため、母親に今後介護が必要になるなどのことも考えると、株式や投資信託をそのまま保有するのではなく、これらの金融資産は売却をして現金化しておくことなどを検討する必要もあります。こういった判断が簡単にできるので、この一覧表は大切です。
 

相続税額が算出されるのか