「生活が苦しいから」と、年金を繰上げ受給する父。どうせ長生きしないとのことですが、何歳まで生きれば「損」することになるのでしょうか? 繰上げ受給の注意点を解説
年金を受け取れるのは原則65歳からですが、月々の支給額を減らす代わりに、年金支給年齢を早める「繰上げ受給」という制度があります。「生活が苦しいから」「毎月の生活費に苦労しているから」といった理由で、少しでも早く年金をもらいたいという人もいるでしょう。   とはいえ、この決断が将来の生活にどんな影響を与えるのか、しっかり考えてみる必要があります。本記事では、デメリットを見ていきながら、繰上げ受給をすべき人、すべきでない人を考えます。

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年金の繰上げ受給、損益分岐点は何歳?

年金受給は本来65歳から始まりますが、60歳から前倒しで受け取れます。ただし、1ヶ月早めるごとに0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの人は0.5%)ずつ減額され、この減額は一生涯続くことに注意が必要です。また繰上げ受給を始めると取り消しはできないため、慎重な判断が求められます。
 
65歳から月額15万円の年金を受給できる見込みの人が、62歳で繰上げ受給を開始した例を考えましょう。0.4%×36ヶ月(3年)で14.4%の減額となります。年金受給額は12万8400円となり、本来の受給額15万円より2万1600円少なくなります。ただこの12万8400円の年金を、通常より3年早く受給開始できるのです。
 
一見すると、62歳から3年間で462万2400円(12万8400円×36ヶ月)を受け取れる点は魅力的かもしれません。しかし、その後の生活を考えると話は変わってきます。65歳以降は本来より毎月2万1600円少ない年金が一生涯にわたって続くためです。
 
この差額が積み重なると65歳から214ヶ月後、つまり82歳10ヶ月になったタイミングで損益が逆転します。
 
2023年の簡易生命表によると、62歳の平均余命は男性が21.98年(83.98歳まで)、女性が27.09年(89.09歳まで)です。平均余命まで生きると仮定すれば、62歳での繰上げ受給は、生きている間に損益が逆転することを示しており、経済的に不利になる可能性が高いのです。
 

繰上げ受給のデメリット