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国民年金の底上げが議論されている背景
日本の公的年金制度は2階建てといわれていて、国民年金をベースに、会社員であれば厚生年金も受給できます。年金制度を維持していくには、財源の確保が必要不可欠ですが、人口や経済の動向に大きな影響を受けるため、年金財政の健全性を検証する必要があります。
厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」によると、2024年に実施された財政検証では、国民年金の給付水準が現在36.2%であるのに対し、過去30年間と同じ程度の経済状況が続くと、2057年度では25.5%にまで低下することが予想されました。
国民年金の底上げを実現するための案として出されているのは、マクロ経済スライドの短縮です。これは2004年の年金制度改正において導入された制度で、給付水準を物価や賃金の上昇よりも低くおさえて、年金制度の支え手となる現役世代の負担が重くなりすぎないようにする仕組みです。
厚生年金については、働く高齢者や女性の増加にともない財政が改善し、マクロ経済スライドは2026年度に終了すると予想されています。しかし国民年金については、財政状況がよくないため、2057年まで続くとされています。
この抑制措置の長期化が、将来の給付水準の低下につながるため、マクロ経済スライドの短縮によって国民年金の底上げを実現させる議論が行われました。
なお、国民年金の給付を増やすための財源は、厚生年金保険料の積立金および国庫負担で賄うとしていて、今後も財源確保の課題は続くと考えられます。