
▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
相続放棄とは
相続放棄とは、相続の権利があっても、その権利や義務を一切受け継がず完全に放棄してしまうことです。相続放棄をすると相続の権利がなくなるのはもちろん、そもそも相続人ではなかったという扱いになります。
通常、相続放棄は相続財産に借金など負の資産が多い場合に、それを引き継ぎがないために取られることが多い手法です。ほかにも、遺産分割の話し合いで親族と顔を合わせたくない場合なども、単独の相続人でも手続きを進められます。
相続放棄をするためには、「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に家庭裁判所へ「相続放棄の申述書」と添付書類の提出が必要です。費用は自分で行えば数千円程度で済みますが、弁護士などに依頼すると5万円から10万円程度が必要になるかもしれません。
相続放棄の注意点
相続放棄で一番注意が必要なのは、放棄した権利が別の相続人に引き継がれてしまう点です。例えば、父親が亡くなり、母親と子ども2人の場合、民法で規定された遺産分割の目安である法定相続分は、被相続人の配偶者である母親が2分の1、子ども2人はそれぞれ4分の1です。
この際、子どもが2人とも相続放棄をすれば、全て母親に権利が移ると思うかもしれませんが、ここに落とし穴があります。図表1のとおり、法定相続分では配偶者には常に相続の権利がありますが、それ以外の相続人には優先順位があり、子どもはその第1順位なのです。
そのため、通常であれば子どもも相続人になりますが、相続放棄をしてしまうと、第2順位である被相続人の父母や祖父母、あるいは第3順位の兄弟姉妹に権利が移ってしまいます。
図表1
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
そうなれば「全て母親に相続させたい」と子どもが思っていても、権利が移った別の相続人の意向次第になってしまいます。つまり、手間や費用をかけて相続放棄の手続きを取ったとしても、思ったような結果にならない可能性が高まるだけです。
また、相続放棄は一度手続きしてしまうと、元に戻すことはできないため、慎重に検討する必要もあります。