英国 から初めて、大量の富裕層が国外に流出

過去30年にわたり、HNWIの移住先として人気の高かった英国からは、2017年、初めて大量の富裕層が国外へと流出した。過去1年で1000人のHNWIが英国に移住したものの、5000人が国外へ移住した。つまり富裕層人口は4000人減ったことになる。

非居住者や外国人の家庭に対する新しい税制が導入され、富裕層が家を購入しにくい環境になったこと、Brexitの影響から自国へ帰国するEU圏の富裕層が増えたこと、特にロンドンにおける犯罪率の上昇や反ユダヤ主義に代表される宗教上の対立など、富裕層間で不安感が広がっていることも大きな要因だろう。

ロンドンが「欧州最大の金融都市」の地位を失う懸念も圧力となり、かつてロンドンに集中していた富裕層は、シドニーやメルボルン、ニューヨーク、サンフランシスコ といった「より安全な国際都市」へと流れている。

英国とは対照的に、フランスはパリという魅力的な都市が首都であるにも関わらず 、長期間にわたり「税金の高い国」として富裕層に恐れられてきた。そのため国外に移住する富裕層は年々増え続け、2016年には1.2万人に達した。ところが2017年には3分の1に急激に減っている。

これはエマニュエル・マクロン大統領によって、不動産以外の特別富裕税廃止など、経済と富の柔軟性を高める政策が打ちだされたことで、国外への移住を思いとどまる富裕層が増えたためかと推測される(ニューヨークタイムズ2018年6月2日付記事)。

富裕層の国外流出は「悪い兆候」?

「富裕層の国外移住が加速している=その国の繁栄に陰りがさしている」と分析する専門家が多い。AfrAsia Bankいわく、富裕層はしばしば、災難から最初に脱出する層である 。歴史上の主要な国の崩壊を振り返ると、通常は富裕層の移住が先行している。

Morgan Stanley Investment Managementの新興市場部門責任者兼チーフ・グローバル・ストラテジスト、ルチア・シャーマ氏 はニューヨークタイムズの記事で、「富裕層の動きがその国の未来について重要な手がかりとなる」と述べている。

ある国で経済的あるいは政治的な困難の兆しが見えると、富裕層はより安全な国外へと資産を移す。「資産だけではなく富裕層が国外へ移住した場合、さらに深刻な事態が差し迫っていると考えられる」と、シャーマ氏は懸念を示している。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online

【こちらの記事もおすすめ】
女性を超える関心度!?「オトコの美活」意識調査結果
住宅ローン控除(減税)をフル活用するための基本の「き」
実はハイリスクなライフイベントTOP5。転職、住宅購入、結婚……
2018年マンションの「駆け込み」需要が起きるってホント?
じぶん時間がもっと増える「ちょこっと家事代行」3選