2017年に中国やインド、トルコ、英国、フランスなどから各国何千人ものHNWI(100万ドル以上の純資産を所有する富裕層)が国外へ流出していることがAfrAsia Bankの報告書から明らかになった。

「富裕層の国外移住が加速=その国の繁栄に陰りがさしている」と一部の専門家は分析しているが、移住の理由や移住先は、国・地域によって若干異なる。

富裕層の国外移住が多い11カ国・地域

まずはモーリシャスに本社を置くAfrAsia Bankが、「New World Wealth」のデータに基づいて作成した「富裕層が多く流出した国・地域(2017年)」を見てみよう。「New World Wealth」のデータは、移民専門家やウェルスマネジャー、ファイナンシャルアドバイザー、様々な統計などの情報を収集したものだ。

9位 ベネズエラ 1000人
9位 ナイジェリア 1000人
9位 サウジアラビア 1000人
7位 ブラジル 2000人
7位 インドネシア 2000人
6位 ロシア 3000人
4位 フランス 4000人
4位 英国 4000人
3位 トルコ 6000人
2位 インド 7000人
1位 中国 1万人

富裕層が国外に移住する理由は様々

これらの富裕層が母国を後にする理由は、事業チャンス・生活水準・教育・税制・医療・安全性など様々だ。特に中国では、国際的租税回避・脱税行為対策「CRS」の導入が、資産を守りたい富裕層の国外移住に拍車をかけている。

中国とインドの場合、大量の富裕層が国外に移住しても、それを上回る数の富裕層が続々と生まれているため、特に懸念はないと AfrAsia Bankは楽観視している。両国の経済が向上すれば、いずれ国外に流出した富裕層が母国に戻ってくる可能性もある。

しかし2年連続で年間5000人を超える富裕層が国外に移住しているトルコは、国内経済への長期的なマイナス効果が懸念されている。国外に流出する富裕層の数が新たに生まれる富裕層の数を上回っているため、年々富裕層の数が減っているのだ。

英国やフランスからの富裕層の流出は、欧州における課税過剰が原因の一つひとつかと思われる。両国の相続税は約40%と欧州圏でも特に高い。

人気の移住先は出身国・地域によってちがう

同じ富裕層でも出身国や地域によって、人気の移住先が異なる点も興味深い。

例えば国外に移住する富裕層が最も多い中国の富裕層は、近年主に米国・カナダ・オーストラリアに流れている。インドからは米国・アラブ首長国連邦・ニュージーランド・カナダ、トルコからは欧州・アラブ首長国連邦、英国からは米国・オーストラリア、フランスからは米国・スイス・カナダなど。

富裕層の国外移住が目立つ英国に、サウジアラビアやナイジェリア、ロシアの富裕層が流れ込んでいるのは不思議だ。