菖蒲とあやめの特徴は?
菖蒲は「サトイモ科ショウブ属」の植物
菖蒲(しょうぶ)とは「サトイモ科ショウブ属」の植物で、川や沼などの水辺に群生します。背丈は70cm程、葉は剣状、微かな芳香が感じられます。花は蒲(がま)に似た穂状(猫じゃらしの先のような形、あるいはアルストロメリアの中央に立つ縦長の部分に似る)であり、色は黄味がかった薄茶色です。
穂状部に小さな花がほぼ密生しているため、一見はブツブツ感があり綺麗とは言えません。そのためか、学名Acorus calamus(あるいはangustatus)のAcorusは一説によればギリシャ語で「美しくない花」を意味する言葉だと言われています。本項の菖蒲は、端午の節句に行う菖蒲湯で使います。
近縁種は同科同属の石菖(せきしょう)で、別名「石菖蒲(いしあやめ)」と言います。石菖の方が菖蒲よりも穂状の花が長いため、見分けは簡単です。ちなみに、菖蒲園で見る菖蒲は大半が花菖蒲であり、本項の菖蒲とは別種の花とされます。花菖蒲は紫花、菖蒲は穂状の花なので見分けは難しくありません。
あやめは「アヤメ科アヤメ属」の植物
あやめとは「アヤメ科アヤメ属」の植物で、湿地は向かず乾燥地を好みます。背丈は30cm~60cm、剣状の葉を持ち、紫色の大輪を咲かせます。中には、白色品種も存在します。漢字では「菖蒲」と書くためサトイモ科ショウブ属の菖蒲との違いで混乱する方が多いようですが、花が全く違うため見分けはとても簡単です。
また、あやめの漢字には「文目」や「綾目」もありますが、一般的には「菖蒲」あるいは「あやめ」「アヤメ」と表記されることが多いです。あやめの学名はIris sanguineaで、日本でも「アイリス」の言葉を見聞きしたことがある方は多いでしょう。アイリスは、日本語で虹を意味する言葉です。
菖蒲とあやめの開花時期の違いは?
菖蒲の開花時期は5月~7月
サトイモ科ショウブ属の菖蒲は、5月~7月に開花時期を迎える初夏の花です。沼や川などの水辺に行くと、自生している姿を見かけることがあります。しかし、花と呼ぶには色も無く形も独特であるため、遠目では見つけにくいかもしれません。
あやめの開花時期は5月中旬~下旬
アヤメ科アヤメ属のあやめは、5月中旬~下旬に開花時期を迎える晩春の花です。開花時期に水辺ではない乾燥地に行くと、その紫色の姿を見かけることがあるでしょう。草木に生える紫色の大輪を咲かせるため、遠目でも発見できます。
菖蒲とあやめの開花時期の長さが異なる
菖蒲もあやめも5月から開花時期を迎えますが、あやめは5月下旬頃に開花時期を終えるのに対し、菖蒲は7月まで開花時期が続きます。そのため、あやめが見られなくなった6月~7月辺りでも菖蒲の花を見つけることはできます。
しかし開花時期はおおよそなので、気候などの影響により開花時期が遅くなったり早くなったりもします。菖蒲とあやめの違いを開花時期だけでは測れないことがあるという話ですが、実際には花の形状が違うので区別の際に問題は生じないでしょう。
菖蒲とあやめの種類の違いは?
菖蒲の種類は少ない
日本で菖蒲(しょうぶ)と呼ぶのは1つだけであり、ヤマイモ科ショウブ属の括りで見ても大方5~6種程しかありません。日本で古くからヤマイモ科ショウブ属とされてきたのは、「菖蒲」と近縁種の「石菖」だけでした。菖蒲はアジア圏・ヨーロッパ圏・北アメリカに分布しています。石菖は、日本と中国の一部に分布します。
現在は「北米の亜種として独立していた種類」も加わって、ヤマイモ科ショウブ属は全部で5~6種類あると言われています。日本に菖蒲の品種改良種は無く、バラなどのように「同じ花でも品種が異なるため名称も違う」といったことは生じません。そのため、菖蒲と言えば「端午の節句で菖蒲湯に使う植物」となります。
あやめの種類は比較的に少ない
あやめの仲間になる植物の種類は、それほど多くありません。菖蒲(しょうぶ)よりは多くありますが、菖蒲園で人々に古くから愛される花菖蒲よりは少ないです。一般的な種類には、戸畑あやめ・チャボあやめ・クルマあやめなどがあります。
戸畑あやめ(とばたあやめ)は北九州市に伝わる小型のあやめで、根元に花を咲かせます。チャボあやめは葉上に花を咲かせ、クルマあやめは内側の花弁が他の種類よりも発達しています。同じあやめでも種類により特徴があり、その特徴さえ知っていれば、違いによる区別が割と簡単に行えます。