薄さといえば、道長とまひろ(吉高由里子さん)の関係も長いわりにはそうでした。『源氏物語』を完結させ、旅に出ると言いだしたまひろに道長は「行かないでくれ!」と取りすがったものの、「これで終わりでございます」と手を振りほどかれてしまっていました。
ドラマではまひろの娘・賢子(南沙良さん)は道長との子という設定になっていますが、突発的に盛り上がって何度か男女の仲になった以外、いつまでたっても生煮え感というか、関係が煮詰まることなく終わってしまい、残念です。
放送開始前の二人は「ソウルメイト」とされ、いざ蓋を開ければ、男女の仲にはなってもとくにそれで距離感が変化せず、「恋人」ではないし、「セフレ」でもなく、「親友」でもない。そもそも求めあっているのかも微妙な宙ぶらりんの関係が続き、何だったのかよくわからないままでした。言うなれば、はずみでセックスしたことがある異性の「友だち」でしょうか。「友だち」という日本語のなんと便利なことよ。
外道の中の外道だった史実の道長を、ドラマでは正義漢の「光る君」として描こうとしたことが最大の過ちだったのかも……。結局、これまでの『光る君へ』というドラマは愛やら権力やらに執着する人間の「闇」を排除しすぎた結果、「光」の部分も描けぬままだったということかもしれません。
次回・46回「刀伊の入寇」のあらすじを確認すると、史実の事件をいちおうタイトルにしているものの、内容はドラマオリジナルの要素が強そうです。正直、周明(松下洸平さん)というキャラもまひろにとっては道長の代理品だった気がしますが、ここらでまひろと周明の「大人の恋」をビシッと描き、「恋愛ドラマの達人」という大石静先生の世評を裏切らぬフィナーレにつながることを期待するばかりです……。