(本記事は、石原加受子氏の著書『「自己肯定感」の高め方~「自分に厳しい人」ほど自分を傷つける~』、ぱる出版、2018年9月22日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『「自己肯定感」の高め方~「自分に厳しい人」ほど自分を傷つける~』シリーズ】
(1)将来の不安を一瞬で打ち消す言葉とは?
(2)「自分が変われば周りが変わる」が間違いを起こしやすいワケ
(3)イヤな相手と少しずつ距離を置き「自分の心を優先する」方法とは?

※以下、書籍より抜粋

不愉快な相手にどう対処するか

関係性という点で言えば、「どちらが悪い」あるいは「どちらにより多くの責任がある」ということにはなりません。

「問題を起こしたのはAだが、問題解決のカギはBが握っている」ということは、現実にいくらでもあるのですから。

相手との関係性を理解するためには、その相手に対して「自分はどういう態度をとったのか」「自分は何を言い、何をしたのか」を知る必要があります。

さらにこの二つを知るには、「自分はどう感じたのか」を理解する必要があるのです。

これは、自分にその問題の責任がまったくなかったとしても同じです。責任はなくとも、その問題に自分が直面している以上、その問題に関係しているのですから。

その問題が起きたとき、自分はどう感じ、どういう態度で、どういう言動をとったのか。それに対して、相手はどういう反応をしたのか。

たとえば、相手が自分にとって不愉快な話をしているとき、自分はどんな対応をしたのか──。相談者にこれらのことを尋ねると、しばしば、

「面と向かって相手に指摘したら争いになるじゃないですか。黙って聞くほかありません」

という答えが返ってきます。

しかし、こんな場面を、関係性の観点から見るとどうなるでしょうか。

まさにその「不愉快な相手の話をずっと聞いている」という自分の対処方法が、相手の不愉快な行動を助長していると言えるでしょう。

相手からすれば、こんなとき、

「この人は、自分の話を黙って聞いてくれて気分がいい」

となっています。

人間関係の問題はケースバイケースなので、「必ずこうすればいい」という答えがあるわけではありませんが、相手の不愉快な行動に不満を抱きながら黙っているよりは、自分自身が、「そんな相手にどう対処するか」を模索したほうが、はるかに賢明でしょう。

それは決して難しいものではありません。

たとえば、相手の不愉快な言動が始まったら、「やたらに相づちを打たない」という方法もあります。同意を求められても、返事をしないということも、自分の立派な意思表示です。

タイミングを見計らい、

「じゃあ、これで、失礼します」

などと話を打ち切って、その場を立ち去るという方法もあります。

もし、これまで自分が、つい相手に合わせて相手の話に関心がある振りをしてしまっていたというのであれば、それをやめるだけでも効果はあるでしょう。

相手が不愉快な言動をとったとき、毎回このような対応をする必要はありません。

また、突然、関わり方を180度変えるのは自分にとっても負担でしょうし、相手も気分を害するかもしれません。

最初は、一度だけ普段と違う対応を試してみる。その後は、少しずつその対応の頻度を上げてみるというのがいいでしょう。

このような対応をしたからといって、一度で相手の不愉快な言動が納まるというような劇的な効果は期待できません。

ですが、相手の不愉快な話を回避できれば、回避できた分だけこちらのストレスは軽減するでしょう。それだけでも成功と言えます。

もし繰り返していくうちに、相手の不愉快な言動が減ったならば、それはもう大成功でしょう。

それぐらい、他人を変えるのは難しいことですが、少なくとも、自分のほうからその「関係性」を変えることはできるのです。