◆意思疎通ができないのが問題

安藤さんの見解は「感情の問題」。夫は仕事、妻は子育て。お互い忙しい中で言えなかったこと、聞いてもらえなかったことが「わだかまり」となって、大きく膨(ふく)らんでいったのです。

「感情の問題」を子供の存在にすり替えて、つらすぎる本質を無意識に避けていたのかもしれません。夫婦が向き合うべき事実に、妻は気づいたのです。

「夫婦にある問題のほとんどが、愛情が基盤になっている」と安藤さん。「死んでほしい」という妻の思いも愛情の裏返しなのです。無関心だったら、憎しみという感情もわきませんよね。

わかってほしい妻とわからない夫。夫婦間で意思疎通ができないのは、相当なダメージです。そこで安藤さんが提案するのが「アイメッセージ」。

たとえば「どうしてあなたはわかってくれないの」といった、あなた(YOU)が主語になる「ユーメッセージ」は抵抗感が生まれるといいます。

片や「私はあなたにわかってほしい」といった私(I)が主語になったメッセージは、相手にすんなり伝わるというのです。

今回の場合、現状維持をしつつ、妻自身の心のケアを同時に行う、という結論になりました。夫への愛情とやるせなさで苦しむ妻の心を、安藤さんは労(いた)わったのです。