◆悪女に追い詰められた少年は、授業中に嘔吐

 ハルキと深愛(齊藤京子)にカッターを手に切りつけていったちふゆ(原菜乃華)は、階段から転げ落ちてケガしたことを「パパには言わない。言ったらさすがに訴えるんじゃないかな。それにハルキのおかあさん、もっと具合が悪くなるよね」と言外に脅しをかける。それからハルキはちふゆに逆らえなくなっていく。

 こうやって男を追いつめながら自分の支配下に置く女性は確実に存在する。高校生であっても大人の悪女ばりに知恵が働くちふゆだが、その心の中には何か空虚なものを抱えているのだろうと想像できる。

「泥濘の食卓」
 相変わらず原菜乃華が怖い。人を小バカにしたようなあの目つき、甲高い声でかんしゃくをおこすあのしゃべり方。かと思うとハルキに迫っていくときの妙に甘い声。ハルキが萎縮してちふゆを見ることさえできない気持ちがよくわかる。彼はストレスから、授業中に嘔吐してしまう。追いつめられていく10代男子が気の毒になっていく。