◆「他人の分け目って見ます?」
アピアランス支援センターには、臨床心理士さんや看護師さんがいて、それぞれの心配ごとに対し、さまざまな人がきめ細やかに相談に乗ってくれます。
「なんとなく怖い」などという漠然とした不安を話に行くのもOK。当時センターに常駐していたKさんは、臨床心理士でした。わたしがもつ漠然とした不安に対し、片っ端から具体的に答えてくれました。
まずは必ず必要になるであろうウィッグについて。Kさんはわたしに、唐突に質問を投げかけました。
「ふだん、電車に乗ってるときって、他人の分け目って見ます?」
そう聞かれると、電車にたまたま乗り合わせた人の分け目なんて気にも留めませんよね。というか、仲良しの友達の分け目さえ見ないです(笑)。そう答えると、Kさんはニッコリ笑って、
「でしょ? ウィッグはちょっと分け目が不自然だったりするのだけど、他人の分け目なんて誰も見てないのよ! しかも誰がウィッグかなんて気にしないでしょ? 自分が『ウィッグがバレたら嫌だな』と思うから、人目が気になるだけ。堂々とすればするほどバレないのよ」
と言いました。