◆もし、この世に弁護士がいなかったら
弁護士。事件や事故が起こらない限り、一生関わることのない人種かもしれません。そう、事件や事故に巻き込まれなければ。
「もし、この世に弁護士がいなかったらどうなりますか?」
あなたは、考えたことがありますか? 結論は「弁護士がいないと無資格の『事件屋』がはびこる」。
『事件屋』とは「資格がないのにトラブルに介入して報酬をもらう人たちのこと」。
実際に、江戸時代から『公事師』という事件屋が暗躍していたそうです。世間には重箱の隅を楊枝でほじくるような商売が、水泡のように生まれてくるのです。
私は弁護士事務所で働いた経験がありますが、皆さん、わりと身近な問題で駆け込んできました。
「隣の犬がうちの門の前に糞をした」「近所の木の枝葉が家の窓を覆ってくる」等々。他人様にとっては小さな問題でも、当事者にとっては大きな問題です。ゾンビも唐揚げも然り。人が健やかな人生を送るために、今日も弁護士は奔走しています。
本書を一読すれば、弁護士の成分がやさしさと勤勉さと誠実さと、ほんの少しのユーモアというのがわかるのではないでしょうか。
<文/森美樹>
【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx