◆どれだけその役を信じられるかを大切にしている

前田旺志郎
――浜口の初登場は、同級生たちが集まった居酒屋場面です。ピントはあっていませんが画面手前に浜口がいるとすぐにわかります。キャラクターを瞬時に把握できるような初登場のワンショットだなと思いましたが、キャラクターを掴む工夫を教えてください。

前田:初見では、なかなか理解できないカモと思う役柄も時にはありますが、でも、普段生活していると「いや、嘘やん」と驚かされる人が意外とたくさんいます。

こんな人いるはずないと思ってしまうと、どうしても自分の芝居と役との間に距離が生まれてしまいます。自分とのギャップがある役でも、現場に入るときはなるべく疑わず、ちゃんと愛情を持って接する。

そこから新しい情報がいろいろ出てきて、こういう人もいるなと思えると、距離感はギュッと縮まります。最近はどれだけその役を信じられるかを大切にしています。

――日常レベルでも先入観で「あの人はこういう人だ!」と決めつけてしまうと、その人の性格や魅力を限定してしまいますね。

前田:そうですね。お芝居の中のリアルと現実のリアルは違いますが、お芝居だから限定していいわけではありません。いろんな可能性を探って、思考を止めないことが大事だなと思います。

――浜口との距離感はどうでしたか?

前田:すごい近かったです(笑)。僕も学生時代、おちゃらけキャラで、近い部分がありました。

でも僕は島育ちではありませんから、生まれ育った環境に大きな違いがあります。脚本の中のヒントを掴みつつ、キャラクターと前田旺志郎のアイデンティティを近寄らせ、接点を見つけ、たぐり寄せる感覚でした。