◆突然の別れ
つきあって半年ほどたった頃、急に優斗さんからメールが来た。当時はまだインスタもLINEもない。ツイッターやミクシィはあったけれど、美和さんたちの連絡手段は携帯電話やメールだったのだ。
「ごめん、もう会えないんだ。そんな一言でした。あまりに急でどうしたのかと思ってね。すぐ折り返し電話しましたよ。最初は出なかったけど……今でも覚えています。3回目で出てくれたんです。もう出ないとまずいと思ったんだと思います。そして、彼の話を聞いて驚きましたよ」
どうやら、美和さんとの交際が、優斗さんの友達経由で家族にばれてしまったらしいのだ。優斗さんのお母さんは、美和さんの身辺調査をしたらしい。そして、優斗さんの結婚相手としてふさわしくないから別れなさいと言われたとのことだった。
「“僕、ママには逆らえないから……ごめん。”そんなふうに、泣きそうな声で言われてしまいました。もう私、こんなドラマみたいなことって本当にあるんだと思って驚きましたね。確かに、私の両親は、地方に住む普通の両親です。
父は小さな工場に勤務、母は近くの食品工場の社員。華やかな仕事ではないかもしれませんが、本当にまじめに働いて、貯金をして、私を私立大まで行かせてくれた大切な両親です。その両親をなぜダメだというのですか? 犯罪でも犯しましたか? 私は、自分のことだけならまだしも、両親に負の烙印(らくいん)を押されたことが悲しくて悔しくてたまらなくて。そんな母親のやり方を許した優斗のことも許せなくなったんです」