◆部屋に来た彼の一言で分かったこと

それから間もなく、優斗さんが、サークルのあとに大学近くの美和子さんのマンションに来ることになった。優斗さんは電車で1時間ほどの親元から通学していたため、たまたま大学の近くの美和子さんの部屋に立ち寄るのは自然な流れだった。

とはいえ、男の人をひとり暮らしの部屋に入れるのは、もちろんはじめてのことだった。急なことでなんの準備もしていなかったが、部屋はいつもきれいにしているほうなので、「コーヒーくらいならどうぞ」と、部屋に案内することになったのだ。

窓 カーテン 花
「優斗はマンションの外観を見て驚いていました。“ここに住んでるの?”と。“そうよ”と、1階の1DKに彼を通すと、また驚いていました。“狭いね”って。その一言で、ああ、彼は裕福なおうちの子なんだと改めて思いました。

なんとなく感じてはいましたが、普段の彼は自慢話をしたりしないので、よく知らなかったんです。でもやっぱりそうでした。割と学費が高い大学でしたし、今思えばお金持ちの子が多かったですね。うちの場合は、共働きの両親が私が小さいときから貯めていた学資保険でなんとか私を送り出してくれた。なのでマンションも10万円未満で探しましたし、築年数は20年以上たっているようなアパート風で、オートロックではありませんでした。

でもね、少女漫画に出てくる小さな洋館のようなカワイイ住まいだと私は思っていたので、彼の反応に驚きました。その瞬間から、なんとなく感覚が違うのかなという印象だったんです」