野田の言う「2年かけて」にもっとも当てはまりそうなのが、令和ロマンだ。昨年の敗者復活戦でオズワルドに続く2位に入り、その評価を大いに高めている。今年の決勝進出は、順当といえる結果だった。
ヤーレンズとダンビラムーチョも、昨年の敗者復活戦を盛り上げた。とはいえ、そのスタンスは対照的だった。ヤーレンズはキンキンに仕上げ切った勝負ネタで挑み、ダンビラムーチョは森山直太朗の「生きとし生ける物へ」を歌い切るというインパクト重視のネタを披露している。この2組も「2年かけて」に当てはまりそうだ。ダンビラムーチョの勝ち上がりは、21年の敗者復活での「からあげ4」から22年決勝進出、準優勝したさや香のイメージに近い。さや香は17年にも決勝に上がっているが、そのときとはボケツッコミも入れ替わっており、まったく別のコンビになっていたと言っていい。
マユリカは「2年かけて」より、さらに1年多く時間がかかったコンビといえそうだ。このあたりは、準決勝のレベルの向上が影響しているとも見える。
あくまで野田の仮説に半ばこじつけた形にはなったが、こうしてさまざまな側面から漫才について考えられるのも『M-1』のひとつの魅力だろう。今年の敗者復活戦を経て、決勝に上がってくるのは誰なのか、そしてその裏で、密かに来年への布石を打つコンビは……?
(文=新越谷ノリヲ)