◆野原家からの「頑張れ」はなかなかのグロさ

『しん次元』のハイライトはラストに野原一家が非理谷に“寄り添う”ところにある。正気を取り戻したものの、これからどう生きていくべきか不安を抱える非理谷。ただ、ひろしは「この国の未来はたしかに明るくないかもしれないけど、それでも生きていかなきゃいけない」と“エール”を送る。

 非理谷も「でもどうやって頑張ればいいのか」と疑問を口にするが、それには「誰かを幸せにすれば、自分も幸せになれる」「だからな、頑張れ」と“道”を示す。そして、ひろしの「頑張れ」を皮切りにみさえもしんのすけも「頑張れ」と背中を押してエンディングとなった。

 ラストの「頑張れ」「頑張れ」の大合唱に若干どころではない怖さを感じたが、特筆すべきは何の解決策も示していないのにハッピーな雰囲気でエンディングを向かえたことでも、「非理谷はこれまで頑張っていなかった」と野原家が悪意なく決めつけていることでもない。マイホーム、マイカーを持つ正社員、二児の父親のひろしが、それらを一切持たない非理谷を「頑張れ」と応援している様子はなかなかのグロさである。なにより、「でもどうやって頑張ればいいのか」と漏らした時にも「頑張れ」と言って、一切の甘えを許さない残忍ささえ感じた。