◆日本語のニュアンスと真意を読み取るのに苦労した

 日本に来て仕事上で戸惑ったことは、いくつかあります。一番困ったのは、「イエス、ノー」をはっきり言わないことです。

 例えば、面接に行ったときに、「じゃあ、また連絡します」と言われたら、私の感覚では「後日、連絡してくれる」と文字通り受け止めていました。でも、待てど暮らせど連絡がありません。

 私から再度、担当者に連絡を入れると、電話口から渋い声で、「すみません、今回はご縁がなかったということで……」とお断りの返事があったことがありました。

 当初は「いったい、どういうこと?」と真意を理解できずにいましたが、日本に来てから幾度か同じようなことがあり、仕事の中で「また連絡させてください」と言われたら、お断りの意味だと理解できるようになりました。

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『ウクライナ女性の美しく前向きな生き方』(カテリーナ著・徳間書店)
 そのことがあってから、日本では、「お断りの暗黙のルール」があることを知りました。例えば、「また連絡します」「ちょっと考えさせてください」は、断りの意味だと理解しました。

 ウクライナでは、このようなコミュニケーションはありません。ダメならダメと伝えるし、必要なければはっきりと「いりません」と相手に伝えます。

 私自身、しばらくは日本のルールに疑心暗鬼になってしまい、「どこまで言っていいのだろう。どこまで相手の言葉を信じていいのだろう」と戸惑いました。