◆一人で過ごす心地よさ、大切な人と過ごすあたたかさ

――『おひとりさまホテル』では、それぞれのキャラクターの心情はもちろん、ホテルのスタッフさんとのやりとりも丁寧に描かれていますよね。

マキ:一人だからこそ、スタッフさんに気にかけてもらえる、サービスしてもらえる楽しさを集中して感じられる部分があると思います。ホテルで働いていた友人も「お客様のことを考えるのが楽しい」と話していました。一人だけど、孤独ではないんですよね。

今後出版される3巻収録予定の「W大阪」というホテルも、お料理の説明やパフォーマンスが楽しめたり、一人でバーにいたらスタッフさんが話しかけてくれたりと、一人でも楽しめるホテルです。

星野リゾート代表の星野佳路さんも、「おひとりさま大歓迎」とお話されていて。星野リゾートはアクティビティも充実していますから退屈しないですし、一人でも楽しめるサービスを考えてくれているんだな、と感じます。そんなホテルがどんどん増えてくれたら、嬉しいですよね。

――これまでマキ先生が泊まったなかで、もっとも感動したホテルはどこですか?

マキ:山口県の大津島場所にある「只只」という宿です。一日一組限定の宿で、東シナ海を一望できるデッキがあるんですよ。ほかのお客さんを気にせず、船が横切るのを見ながら五右衛門風呂に入れます。なかなかアクセスが良いとは言えないし、お値段もおひとりさま向きではないので、まだ漫画では紹介できていないんですが。

――あらためて、マキ先生の思うホテルステイの魅力について教えてください。

マキ:やっぱり私は、ホテルの魅力=サービスだと思います。おもてなしが素敵だと、良い気持ちで旅をスタートできるじゃないですか。お部屋にあるウェルカムスイーツやドリンクなども、地元を表現しているものだと魅力的に感じますね。

最近は宿泊代も高騰している関係で、ひとりホテルステイもお値段の面がネックですが……30代~40代以降の、自分が稼いだお金の範囲でいろいろと選びとるのが楽しい、そんな風に思い始めた世代に響いてくれると嬉しいですね。

【マキヒロチ】

第46回小学館新人コミック大賞入選。ビッグコミックスピリッツにてデビュー。リアルな人間模様を描いたストーリー漫画から、時計専門漫画、ギャグエッセイなど幅広いジャンルで活動中。著作に『いつかティファニーで朝食を』『創太郎の出張ぼっちめし』(いずれも新潮社刊)『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』『SKETCHY』などがある。

<取材・文/北村有>

【北村有】

葬儀業界を経て2018年からフリーランス。映画やドラマなどエンタメジャンルを中心に、コラムや取材記事を執筆。菅田将暉が好き。