総製作費20億円の東映70周年記念作品というだけあって、本作は上映3カ月前から大々的なプロモーションがスタート。昨年11月上旬の「ぎふ信長まつり」では、木村が出席した6日の人出がおよそ46万人にものぼったのは記憶に新しい。そして公開月である今年1月からは、日本テレビ、TBS、テレビ朝日、フジテレビと民放各局の人気番組に木村ら出演者が続々と出演。“キムタクに恥をかかせられない”とばかりに、手厚いバックアップ体制が敷かれている。

 それなのに、採算ラインを超えそうにない結果となりそうなのはなぜか。前出の映画ライターが問題点を指摘する。

「一つは上映時間の長さ。2時間48分ですから、観客は3時間近く拘束されるわけで、気軽に観に行けるタイプの映画になっていない。そしてそれ以上に大きかったと思われるのが、ターゲット層のズレ。木村の時代物といえば2006年の『武士の一分』が興収40億超えで松竹配給映画として当時の歴代最高記録をたたき出しましたが、あれは原作・藤沢周平による山田洋次監督の『時代劇三部作』の最後を飾る作品ということもあり、幅広い層から支持を得ることができた。しかし今回は、“製作費20億円の超大作時代劇”でありながら、期待された迫力の合戦シーンは少なく、織田信長と濃姫の“ラブストーリー”が主になっているオリジナル作品で、歴史物が好きな層には受けない。さらに言えば、ほとんど史料が残っていない濃姫について、謎が多いのをいいことに好き放題“新しい解釈”で描かれているのも、歴史好きの人には噴飯もの。結末を含め、戦国ファンタジーとして受け止められる人でないと厳しい評価になるでしょう。そもそも脚本の古沢良太氏がやりたかったのは、“最悪の政略結婚”や“最悪のボーイmeetsガール”といった時代劇ラブコメだそうですから、東映70周年記念作品という格式ある企画と最初からあまりマッチしていなかったのでは?」