「ちょっと幸せ」をテーマに、グルメ・美容・健康・カルチャーなど、女性にうれしい情報満載のフリーマガジン「Poco'ce(ポコチェ)」から多部未華子さんのインタビューをお届けします♪
cover interview 多部未華子
EXILEや、J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEなどに数多くの詞を提供してきた作詞家・小竹正人の小説『空に住む』を青山真治監督が実写映画化。両親の急死後にタワーマンションで暮らし始めた出版社勤務の主人公・直実が、国民的スター俳優・時戸森則との逢瀬に溺れ、揺れ動く姿を描いている。現実と夢の狭間で葛藤しながらも新しい人生を選択するために彼女が下した決断とは? 主演の多部未華子さんにお話しを伺った。
Profile
1989年生まれ。2002年に女優デビュー。2005年、映画『HINOKIO』と『青空のゆくえ』で第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞するなど、10代から存在感のある演技で幅広く活躍し、2009年には連続テレビ小説「つばさ」のヒロインに抜擢。ドラマ『これは経費で落ちません!』『私の家政夫ナギサさん』や、映画『君に届け』『ピース オブ ケイク』など数多くの作品に出演。
誰かの心の片隅にちょっとでもひっかかる作品になっていたら嬉しいです
「すごく難しい役でした」
直実という役を振り返ってそう話し始めてくれた多部未華子さん。
両親の急死という出来事を受け入れられないまま、叔父夫婦の計らいで大都会を見下ろすタワーマンションの高層階に住むことになった28歳の直実。家には相棒の黒猫ハルがいて、職場である小さな出版社には気心の知れた仲間がいるものの、ポッカリと開いた心の穴は埋まることはない。スター俳優と夢のような出会いをし、恋に落ちるもののいまいち現実味が湧かず、直実は感情を上手くコントロールできない自分への焦燥感を募らせていくという役どころだ。
「仕事、人生、愛の狭間で揺れ続ける直実は、両親からも雲みたいと言われるようなつかみどころのない子。最初は全く共感できず、正直よくわかりませんでした。直実に限らず、この作品に登場する女性はみんな言うことが哲学っぽいので難しかったです」
そう多部さんが話す女性とは、美村里江さんが演じる叔母の明日子と、岸井ゆきのさん演じる同僚の愛子のこと。明日子は何不自由なく暮らすも、どこか虚無感を感じていて何かと直実の世話を焼き、愛子のお腹の子にはワケアリの事情が…。
「脚本を読んだ時に明日子と話している直実の言葉も、愛子を励ます直実の言葉も、それが本心から出た言葉なのか、それとも共感しているフリをして言っているだけなのかがわからなかったんです。でも途中から100%理解しなくてもいいんだと思えるようになったというか、自分でそう解釈したら気持ちが楽になって。それから撮影を楽しめるようになりましたし、出来上がった作品を見た時には、それぞれに共感できるとまではいかなくても『こういう人もいるな』って思えるようになったというか、意外と多いんだろうなと思いました」
実際、仕事や結婚、出産、親の介護など。20~30歳女性は、向き合わなければいけない人生のターニングポイントが迫ってくる。突然襲ってくる寂しさや不安に心が押しつぶされそうになりながらも、なんとか頑張って生きている人も多いのではないのだろうか。多部さんにはそのような経験は…とお伺いしようとしたところ「あまりないですね」とあっけらかんと答えが返ってきた。
「私は自分がやりたいと思ったことは是が非でもやりたいけれど、それ以外はあまりこだわりがないんです。人間関係も自分が窮屈に思えるような人だったら自分の人生に置かないというか、心のシャッターを降ろしてしまうので、人間関係に悩むこともあまりありません。とてもはっきりした性格だと思います。子供の頃から、『出来ないものは出来ない、あなたと私の人生は違うから期待しないでね』と、両親にも伝えていましたから(笑)。きっと自分が自分にあまり期待していないのだと思います。もちろん、出来る限りのことはしっかりやります。でも“どうしてもっと出来ないんだろう”と悩むことはありません」