イラクの大都市ナジャフは、イラクにおけるシーア政治権力の中心地であり最も神聖な都市、精神的な首都の一つです。イスラム教の父ムハンマドの義理の息子であり娘婿でもあるイマーム・アリーの埋葬地としても有名です。
イスラム教シーアの最大聖地ナジャフ
ナジャフは、イラクの首都バグダッドのおよそ160km南、ユーフラテス川の西岸に位置する都市です。第四代カリフでシーア派の初代イマームであるアリーの墓廟があり、スンニ、シーアの派閥を問わず尊崇を集め、特にシーアの人々にとっては重要な巡礼地とみなされています。
ホメイニ師も学んだナジャフの歴史
ナジャフは18世紀頃からイスラム教シーア十二イマームの高位法学者が数多く居住するようになりました。国民のほとんどがシーアである隣国イランの信徒を留学生や巡礼者として集めるようになり、何世紀にもわたり多くのホスピス、学校、図書館、修道院が廟の周辺に建てられ、クーファとともにシーア学問と神学の中心地となりました。
イランのアヤトラ・ホメイニ師も1964年から1978年までここで講義を行っており、1970年代にイラク、イラン、レバノンで勃興した新しいイスラム運動の指導的人物の多くがナジャフで学んでいます。
2003年のアメリカによるイラク侵攻の際、ナジャフは侵攻してきた米軍の標的となり、激しい戦闘で包囲され占領されました。米軍が退き2012年には、アラブ世界の文化センターに選ばれています。また、2021年3月には、ローマ法王フランシスコの歴史的なイラク訪問の際にナジャフを訪れ、宗教間対話を行い同国におけるイスラム教徒とキリスト教徒の平和共存のメッセージを表明しました。
シーアにとっての最大聖地ナジャフ
ナジャフはイラクにおける十二イマーム派の中心都市に発展するとともに、シーアのイスラム教徒にとって神聖な場所とされ、巡礼の中心地となっています。イマームはイスラム教徒の「指導者」、「模範となるべきもの」を意味するアラビア語です。イスラム教シーアの十二イマームは下記のとおりです。
【イスラム教シーアの十二イマーム】
- 第一代イマーム:アリー
- 第二代イマーム:ハサン
- 第三代イマーム:フサイン
- 第四代イマーム:アリー・ザイヌルアービディーン(フサインの息子)
- 第五代イマーム:ムハンマド・バーキル
- 第六代イマーム:ジャアファル・サーディク
- 第七代イマーム:ムーサー・カーズィム
- 第八代イマーム:アリー・リダー
- 第九代イマーム:ムハンマド・タキー
- 第十代イマーム:アリー・ハーディ
- 第十一代イマーム:ハサン・アスカリ
- 第十二代イマーム:ムハンマド・ムンタザル(マフディー) - 隠れイマーム
尚、第十二代となる「ムハンマド=ムンタザル」は迫害を避けて「お隠れ(ガイバ)」になった」「その後も人知れず生き続け、世の終わりに先立って救世主として再臨する」と信じられており、その時がきたらクーファのグランド・モスクに姿を表すとされています。