◆さらにダメ出しまで…帰りたい

 仕方がなく、彼から受け取った台本の台詞を読む雅美さんでしたが……。

「その内、彼は私の台詞の読み方を指摘してくるようになりました。『そこはもっと抑揚をつけて』『こっちは悲しいけど温かい心で』とか、それも、結構強めな口調で言ってきて。

 私はなんだか彼に洗脳されているような感覚になりながらも、早くこの時間が終わらないかなと、フワフワとした頭の中で思っていましたね。あの公園での時間は、ものすごく長かったです」

 もともと目立つのが好きではない雅美さんにとって、公園でひと目に晒されての稽古は相当つらい時間だったようです。

 それ以来、雅美さんは「彼とは付き合えない」と思い、彼と会うのをやめました。しかし、一途に夢を追い求める健二さんには夢を掴んで欲しいと思っているそう。

 夢を追う姿を、陰で支えるくらいの距離感で付き合える相手を、雅美さんは今も探しています。

<取材・文/maki イラスト/ズズズ@zzz_illust>