現金を使わずに支払いを済ませられる「キャッシュレス決済」は、近年急速に広まっています。いったいどのようなもので、どんなメリットがあり、どんな点に注意して使うべきなのでしょうか?今回はキャッシュレス決済について詳しく解説します。

キャッシュレス決済とは?

(写真=PIXTA)

キャッシュレス決済とは現金以外の支払い方法のことで、クレジットカード、電子マネー、デビットカード、QRコード決済などがあります。

カードやスマホ、レジに置いてある専用端末を使って、現金が手元になくてもお買い物ができるのが特徴で、その便利さやお得さから利用者が増え続けています。

「ポイント還元」で政府も後押し!キャッシュレス決済のメリットとデメリット

(写真=PIXTA)

キャッシュレス決済にはどんな特徴があるのでしょうか。

キャッシュレス決済のメリット

キャッシュレス決済には、現金にはない優れた点がいくつもあります。

・スムーズにお会計ができる

普段のお買い物のときは、カードやアプリを提示すればお会計ができます。小銭をじゃらじゃらさせてレジ前でもたつくことがないので、非常にスムーズです。クレジットカードなどは、ネットショッピングでも簡単に使えます。

・ポイントが貯まってお得

キャッシュレス決済は、利用に応じてポイントが貯まっていく仕組みになっています。「ポイントを貯めたいからキャッシュレス決済を利用している」という方も多いです。

各社がそれぞれお得なポイント制度を打ち出して競い合っています。政府も2025年にキャッシュレス決済の比率を40%にするという目標を掲げ、それに向けてさまざまな政策を実行しています。

最大5%のポイント還元が受けられた「キャッシュレス・消費者還元事業」は2020年6月で終了しましたが、7月から「マイナポイント事業」という新しい制度の申し込みが始まりました。これは、マイナンバーカードを持っている人限定で、自分で選んだキャッシュレス決済サービスで使えるポイントを最大5,000円分もらえるというものです。このように国の政策でも、キャッシュレスだからこそ受けられる恩恵が出てきています。

・お金を使った記録が確実に残る

キャッシュレス決済では、「お金を使った実感がなくて怖い」「お金を使い過ぎそうで怖い」という方もいますが、実はうまく使いこなせばキャッシュレスのほうが家計管理はしやすくなります。

なぜなら、現金と違ってどのお店でいくら使ったのかが確実に記録に残るからです。家計簿をつけていなくても、カードやアプリの利用履歴を見れば、自分のお金の使い道を簡単に確認できますよ。

・現金に触れたり持ち歩いたりする必要がない

キャッシュレス決済を利用する頻度が上がれば、現金に触れたり持ち歩いたりすることを減らせます。ATMに行ってお金を引き出す回数を減らせたり、コンパクトなミニ財布で済むようになったりするため、無駄のないスマートな暮らしが実現します。

誰が触ったかわからない現金よりも、自分のカードのほうが清潔に保てます。また、現金は紛失したり盗難されたり燃えたりしたら終わりですが、キャッシュレス決済は紛失や盗難に気付いた時点で利用を停止することもできますし、不正利用された場合でも補償があることが多いので安心です。

キャッシュレス決済のデメリット

キャッシュレス決済で、注意しておきたい点についても確認しておきましょう。

・現金払いしか対応していないお店もある

全国チェーンのお店や都心ではキャッシュレス決済に対応しているお店が増えていますが、それでもまだ「支払い方法は現金のみ」というお店は少なくありません。

馴染みのお店がどこもキャッシュレスに対応していなければ、わざわざキャッシュレス決済を始める必要もないでしょうし、メリットも薄いでしょう。

この点に関しては、今後さらにキャッシュレス化が進んで、どこのお店でも現金以外で支払うのが当たり前になってきたら、デメリットではなくなるでしょう。

・災害時や充電切れなどの際に困る

キャッシュレス決済の利用は、スマホや端末が通常どおり動いていることが前提です。大規模な災害などで停電が起きたり、スマホが充電切れになったり、故障してしまったりすると使えなくなります。

キャッシュレスだけに頼っていると、このような緊急事態のときに困ってしまうかもしれません。もしもに備えて、帰宅やちょっとした買い物に困らないくらいの現金は常に持っておきたいところです。

キャッシュレス決済の種類と特徴

(写真=PIXTA)

キャッシュレス決済にはいくつもの種類があり、使い勝手やお得度などそれぞれ違う特徴があります。詳細を以下の表にまとめました。

クレジット
カード
デビット
カード
電子マネー QRコード決済
サービス
楽天カード
三井住友カード
dカード
JCBデビット
三菱UFJデビット
JNB Visaデビット
WAON
Suica
nanaco
PayPay
楽天ペイ
LINE Pay
特徴 ・利用者が多い
(日本のキャッシュ
レス決済の
9割を占める)

・銀行キャッシュ
カードに自動付帯
されている
ことも多い

・支払いと引落が
同時に行われる

・JRなど特定の
交通機関で
使えるもの、
イオンなど特定の
系列店で使える
ものなどがある

・支払いにスマホ
アプリを使う

・多くの
ポイントが
還元される
キャンペーン
が多い

支払い
方法
レジでカード
を提示する
(サインや
暗証番号が
必要な場合
もある)
レジでカードを
提示する
(サインや暗証番号
が必要な場合もある)
レジの端末に
カードをかざす
(スマホで利用
できる電子マネー
もある)
スマホのアプリ
を開いてQRコード
やバーコードを
レジで読み取る
メリット ・ポイントが
貯まりやすい
・利用できる
お店が多い
・口座残高の
分しか買い物
できないため、
お金の管理
がしやすく
使い過ぎを
防げる
・ピッとかざす
だけで決済が済む
・ポイントが
貯まりやすい
注意点 ・うまく管理
しないと
使い過ぎる
可能性も
・年会費が
かかるカード
もある
・口座残高を
超える買い物、
分割払い、
リボ払いなど
はできない
・チャージが
必要で高額
決済には
向かない
・スマホが
使えないと
利用できない
・スマホを開いて
アプリを開いて
該当箇所を見せる、
という流れが手間
に感じる人も
向いて
いる人
・いくつも支払い
方法を使い分ける
のが面倒で、
できるだけ
いろんな
タイミングで
使える方法を
選びたい人
・キャッシュレス
決済に挑戦して
みたいが不安が
ある人
・電子マネーの
発行主体
である買い物
スポットや
鉄道を日常的に
利用する人
・スマホを使い
こなして
最新情報を
ゲットすることを
楽しめる人
・よりお得を
求めたい人

効率良くキャッシュレス決済を利用する方法

(写真=PIXTA)

せっかくキャッシュレス決済を使うなら、できるだけ上手に活用したいですよね。効率良く利用するためのコツをご紹介します。

キャッシュレス決済は自分に合ったものを選ぼう

大幅なポイント還元やキャンペーンにつられて、新しいキャッシュレス決済を使い始めたとしても、自分がよく行く店が対応していなかったり、ポイントを貯めても使い道がなかったりすると意味がありません。 

スーパーやコンビニなど、自分が普段よく行くお店で使えるのか、貯めたポイントはどこで使えるのか確認して、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

ポイントを貯めよう

キャッシュレス決済の長所を最大限に活かすには、やはりポイントをしっかり貯めたいですね。普通に使うだけでも貯まりますが、少し工夫することでより多くのポイントを貯められます。

・ポイントを貯める工夫1.キャンペーンを利用する

多くのキャッシュレス決済サービスでは、多くのポイントが還元されるキャンペーンを頻繁に開催しています。
「毎月〇日」など特定の日がお得になったり、「事前にエントリーしたら」といった条件付きでお得になったりします。参加できるキャンペーンがないか、サイトやアプリでこまめに情報をチェックしておきましょう。

・ポイントを貯める工夫2.ポイントの2重取り、3重取りを狙う

上級者向けかもしれませんが、例えば「特定のクレジットカードを、相性の良いスマホ決済アプリに連携させて支払い、支払い時にそのお店限定のポイントカードも一緒に提示する」というように複数の支払い方法を組み合わせることで、1回のお買い物でポイントを2重取り、3重取りできることがあります。

キャッシュレス決済に慣れてきたら、このような裏技的な方法も試すのもいいでしょう。たかがポイントと思うかもしれませんが、年間数万円単位で貯めることもできるので、意外と大きいですよ。

キャッシュレス決済が進んでいる国は?

(写真=PIXTA)

世界を見渡すと、日本よりもキャッシュレス化が進んでいる国が多くあります。

(出典:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」)

グラフを見ると、韓国を筆頭に、中国、カナダ、イギリス、オーストラリア、スウェーデンといった国々では支払いの5~6割がキャッシュレス決済であることがわかります。

韓国や中国では、脱税防止や偽札対策の一環として、政府がキャッシュレス化を推進しています。スウェーデンでは、デビットカードがよく使われています。お店によっては「現金お断り」という看板を掲げているところもあり、実際にお店まで行って手元に現金があっても、キャッシュレス決済でないと買い物ができないところもあります。

日本でも、ようやくキャッシュレス決済が普及してきました。政府は、2025年までにキャッシュレス決済比率40%、最終的には世界最高水準の80%まで高めることを目標に、さまざまな政策を打ち出しています。

民間企業でも次々に新しいサービスが出てきており、この分野はかなり速いスピードで進化しています。ここ数年の傾向を見ると、今後もキャッシュレス決済を利用する人や、利用する機会は増えていくでしょう。

自分に合ったキャッシュレス決済を見つけて始めてみよう

(写真=PIXTA)

キャッシュレス決済にはいろいろな種類があるので、探せばあなたにぴったり合うものがきっと見つかるはずです。気を付けるべき点を踏まえて、便利にお得にお買い物を楽しみましょう。

 
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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