【BARのマスターに聞く! 第6回】

こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

今回のテーマは、コミュニティやパーティーなど、大人数の場での振る舞いについてなのですが、つい先日、私はちょっとした反省をしたばかりです。

それはある仕事関係のパーティーに参加したときのこと。コロナ禍や産休もあり、大人数で集まるリアルな場はすごく久しぶりでした。そのせいか、沢山の人と顔を合わせて話すシチュエーションにしどろもどろ。自己紹介であわあわ、飲み物や食べ物を取るタイミングも受け身で、楽しかったけどホスト側にちょっと気を使わせてしまったかもと反省がありました。

林伸次さんと筆者・おおしまりえ
「BAR BOSSA」のマスター林伸次さん(右)と筆者・おおしまりえ(左)
やっぱりいい大人なら、立食パーティーや大人数での会話はスマートにこなせたらいいな。そんな願望も持ちながら、渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主で作家の林伸次さんと、「大人からのコミュニティでのスマートな振る舞い」について話を聞いていきます。

◆大人数での振る舞い、うまい人はここが違う

おおしまりえ(以下、おおしま):先日反省したばかりの私なので、ぜひ林さんにうかがいたいのですが、コミュニティでの振る舞いで、今まで「上手いな〜」と思った人はいますか?

林伸次さん(以下、林):いますね。僕はお店で友達作りや婚活を目的にしたイベントをよく企画します。その中である男性が、お土産にお菓子を持参していたんですよ。

おおしま:お土産作戦ですか。意外と普通ですね(笑)。

林伸次さん
林:そう思うでしょ。その方は「これ良かったら」って皆さんに配るんです。そしたらもらった側は「これオイシイですね!どこのですか?」って質問が出て盛り上がります。

そこで気づいたんですが、その人はただお土産を持参したのではなく、渡した後に話のネタになることを想定して準備していたんです。凄いなーって思いましたね。

おおしま:普通のお菓子じゃなくて、ご当地物やこだわりの物を持参したんですね。準備がいい!

林:そういう配慮が出来る人って、ご当地土産を持っていったら理由を聞かれて仕事の話になるとか、女性や甘党が多い場にお菓子を持っていったら場が和むとか、その後の展開を予想しているんです。日本人ってパーティー下手だと言われていますが、こういう振る舞いも含めて意識できる人はやっぱり違いますよね。

◆「個」ではなく「全体」を優先することが満足度アップの秘訣

おおしま:私は最近意識することがあるんですが、コミュニティで自分の満足度を得たいと思ったら、自分のことよりコミュニティに貢献するような振る舞いができた方が、巡り巡って自分の満足度の高さや人間関係の発展につながるなと思って、実践するようにしています。

コミュニケーションに余裕がないと、つい「今日の自分の成果」みたいな部分にフォーカスしがちです。でもそこだけに目を向けるのではなく、コミュニティに貢献する姿勢があると、余裕ができて人のために振る舞えたり、普段は繋がらない人と接点が持てたりして、結果としていい形に収まるのかなと思うんです。

◆大人数の付き合いには「出入りがラク」というメリットが

林伸次さんと筆者・おおしまりえ
林:それはまさにコミュニティの持つ良さですよね。職場や学校ではないコミュニティでの関係って、普通の友達関係と違っていつでも出入りできるという特徴があります。

よく飲み屋の常連同士が恋愛に発展しやすいのって、もし失敗したらそこに行かなければいいからだと思うんです。これが職場とか長年のサークル仲間とかだと、けっこうしんどい。

大人数での人間関係が苦手な人は、「浅いつながり」とか「空気を読むこと」とかに抵抗を覚えるのかもしれませんが、実は出入りがラクというメリットがあります。

あと、コミュニティでの人間関係は大人数の浅い付き合いに見えて、裏側で個別のやり取りが活発なケースは本当に多いです。そういう全体でのコミュニティと個別のコミュニティを使い分けられると、より友達関係は幅が持てるかもしれませんね。

◆悪口やネガティブ発言で繋がるのってどうなの?

おおしま:私はこの春出産をして、せっかくなので匿名のママ垢(SNSのアカウント)を作ったんです。ママ同士の繋がりを見ていると、良くも悪くもちょっと浮いている人がいるなって最近気づきました。

SNSコミュニティとは少し違うかもしれませんが、大人数の中での振る舞いという意味では同じ気もします。そういう場での振る舞いの注意点には何かありますか?

林:やっぱり、常に自分語りはダメですよね。特に男性は、自分の好きなジャンルの話になると、語っちゃうケースは多いです。

おおしま:最近そのママ垢で見つけたんですが、いつも誰かについての悪口を言っている人がいるんです。夫や義実家、実母とか、自治体とか政治とか。対象は様々なんですが、愚痴を言うことで自分を正当化しているようにも見えて、うーんと思っちゃいました。

愚痴がダメというよりも、コミュニケーション手段としてのネガティブ発言ってどうなのかなって…。

◆「まずい」「面白くない」を言わない理由

林:実は僕は、自分に「ネガティブ禁止」を課していて、悪口を一切言わないようにしています。きっかけは松井秀喜さんが悪口禁止を中学時代から守っていると聞いたからです。僕のコミュニティでは、僕がネガティブ禁止を実践しているとみんな知っているので、自然と周りもネガティブ禁止を意識する場になっているかもしれません。

林伸次さんのBAR BOSSA
おおしま:素敵な場ですね! 例えば「まずい(不味い)」とか「面白くない」とか、悪口なのか感想なのか微妙な表現はどうしているんですか?

林:ひろゆきさんが言っていたそうなんですが、世の中には「まずい」って感覚はないらしいんです。厳密には、火加減や味付けが自分の好みじゃないとか、自分基準で好きになれない理由があるだけなんですって。

その理由をきちんと口にすることは悪口とは言わないので、ちゃんと自分にとっての理由を言葉にするようにしています。「面白くない」も同じです。自分にとって引っかかった理由は言語化しますし、作者側としてもちゃんと理由を聞きたいです。

◆ネガティブ発言は周りの空気も巻き込んでしまう

おおしま:感覚や思考の深堀りにもなりそうですね。

林:これはお客様に教えてもらったんですが、脳波って人から人に移ることが実験で分かっているそうです。だからネガティブな言葉を発していると、機嫌が悪い脳波が自分の中だけでなく周りにも伝わるんですって。確かに1人が不機嫌だと、その空気が周りに伝わることってありますよね。

それを知ってから、ネガティブな発言もそうだし、誰か敵を作って盛り上がるコミュニケーションとかも、自分はやめたほうがいいなって思って実践しています。

おおしま:この記事も、面白くなかったらぜひ個別具体的に言語化してもらえたら学びになります…が、やっぱりそれはそれで凹みそうです(笑)。

【林伸次さん】

渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主。中古レコード店、ブラジル料理店、ショット・バーで働いた後、1997年「BAR BOSSA」をオープン。バーを経営する傍ら著作家としても活躍している。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。

<取材・文/おおしまりえ 写真/林紘輝>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518