一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります

山田涼介と内野聖陽。25歳差の2人が、スクリーンの中で相まみえる。それが、堂々の2部作となる映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』だ。

10代の頃からエンターテインメントの最前線を走り続ける山田涼介と、文学座からキャリアを出発させ、今や名優の誉れ高い内野聖陽。

バックグラウンドも個性も異なる2人は、お互いのどんなところにプロフェッショナリズムを見たのだろうか。

山田涼介の「監督のビジョンを信じる覚悟」

それぞれ相手のどんなところにプロフェッショナルとしてのすごみを感じましたか。そんな質問に、先に口を開いたのは先輩である内野さんだった。

内野「空き時間に、山田くんが最新のCGを使ったハリウッド映画の動画を見せてくれて。向こうではどんな映画が出てきているのか熱く語ってくれたんです。

確かに海外のレベルは高い。でも日本のCGも今やハリウッドと遜色のないところにまで来ている。だから、俺たちも頑張れそうだなということを2人で話して。その時に感じましたね、彼の目線の高さを」

映画『鋼の錬金術師』は、『タイタニック』のVFXを担当した曽利文彦監督による全編フルCGが見どころの一つ。その主演俳優として、山田涼介は並々ならぬ気概で挑んでいたと内野さんは証言する。

内野「世界に負けないCG映画をつくるんだという覚悟がすごく感じられたんです。山田くんは、曽利監督のビジョンを信じている。

それは、出演する俳優としては当たり前といえば当たり前なんですけど、それでもグリーンバックしかないところに『鋼の錬金術師』の世界を出現させるには、監督のビジョンを信じる強い覚悟が必要。それが立派だと思ったし、自分もこうあらねばという気持ちにさせてもらいました」

2017年に公開された前作から主人公・エドワード役を続投する山田さんは、グリーンバックの前で芝居をすることについて「楽しいものかと聞かれると、楽しいものではないけれど……」と苦笑いした上で、フルCG撮影に挑んだ日々をこう振り返る。

山田「周りに何もない分、想像力を豊かにして臨まないといい演技はできないですし、役者だけじゃなく、あらゆる部署のスタッフさんと一緒につくり上げていく空気感があって。それがすごく好きだし、すべての人の力が合わさって映像が完成した時の感動は、なかなか他では味わえないものがありますね」

【山田涼介×内野聖陽インタビュー】「世界と勝負できる日本映画をつくりたい」壮大な夢に挑む作り手たちのプロフェッショナリズム
(画像=『Woman type』より引用)

内野「監督が用意した絵コンテを確認しながら撮影に入るんですけど、そこで山田くんが『監督の描いた絵はこうだけど、実際に撮影するときはこうなるんじゃないですか』というようなことをよく教えてくれたんですよ。

山田くんはシリーズ2作目の撮影だったので、僕よりもいろいろなことをよく分かっていて。彼から教えもらって、どんなふうに演じればいいのか、どんな仕上がりになるのか、腑に落ちる局面は何度もありました」

山田「1作目を撮っている時から大好きな作品でしたし、僕も監督も撮影を重ねるにつれてどんどん熱くなって。これはちゃんと完結させないと実写化した意味がないよね、ってよく話していたんです。その夢が4年越しにこうしてかなった。その時点で、やっぱり特別な思いがありました。

しかも、内野さんをはじめ、これだけそうそうたるキャストの皆さんが集まってくださった。だからこそ、座長として、1作目を経験した者として、絶対にブレてはいけないと思ったし、僕が経験したことでお伝えできることがあればどんどん伝えていきたかった。

そして、監督が一人一人に同じ密度で接していくのは難しいと思うので、監督のそばにいる者として、代わりに皆さんに思いを共有できるところはしていきたいな、とも考えていました。そういう役割分担みたいなことは、撮影中ずっと意識していましたね」

内野「絶対に曽利監督は山田くんに感謝していると思いますよ。

監督はやることがたくさんあって、現場ではなかなか自分の思いのすべてを伝えきれないとおもいますから。そうやって監督と同じ志を持つ人が、役者仲間に影響を与えてくれたことは、この映画を完成させる上で絶対に大きかったと思う」

本作の作り手たちの根底にあるのは、「世界と勝負できる映画をつくりたい」という壮大な夢。国内と国外のボーダーラインが薄まりつつある映画界で、世界中の人たちがワクワクできるエンターテインメントを届けるべく、誰もが粉骨砕身した。

山田「ハリウッドで活躍されているスタッフさんもたくさん参加してくださって、CGに関しては1作目よりも圧倒的にスケールアップしました。きっと『復讐者スカー』を観たら、早く『最後の錬成』が観たいと思える作品になっているはず。これだけワールドワイドな作品に出られたことは、僕にとってもすごくうれしいことですね」

内野聖陽の圧倒的な「役への没入感」

山田さんは、大先輩の内野さんについて、「僕なんかが言うのもおこがましい話ですけど」と恐縮した上で、こう称賛の言葉を送る。

山田「内野さんは役への没入の仕方が全然違う。今回、ホーエンハイムとお父様の二役を演じてらっしゃるんですけど、ホーエンハイムでいるときとお父様でいるときとでは、身にまとう空気感がまったく違っているんです。

現場でも、ホーエンハイムでいるときは気軽に話し掛けられるんですが、お父様のときはうっかり話し掛けられないような緊張感が漂っていて。役者としての経験の差を感じたというか、こうでなきゃいけないよなというものを見せていただきました」

内野「そんなに器用じゃないだけですよ(笑)。例えば、お父様のキャラクターは、非常に口数が少なく、感情を抜いてしまっているようなところがある。だから、直前にペラペラと『昨日食べた何々がおいしくてさ』なんていう話をしていたら、すっと役に入れないんですよね。

そのキャラクターが持つ居住まいや呼吸感、どういうものと相対して戦っているのかをイメージしていないと薄っぺらくなっちゃうじゃない。なので、やっぱり自然としゃべらなくなってしまうし、自然と寄せ付けなくなってるだけの話だと思います、きっと」

山田「あと、“フラスコの中の小人”の声も内野さんがやってらっしゃるんですけど、その声がホーエンハイムともお父様とも全然違うんですよ。

楽屋が隣だったので、内野さんが発声練習されているのが聞こえてきて。壁越しに聞きながら、こっそり勉強させてもらっていました」

内野「そうなの? 遊んでいただけですけどね(笑)」

山田「三つも違う役を演じるのってすごく難しいはずなので、それをどうやったら面白くできるんだろうと不思議に思っていて。内野さんが楽しみながら試行錯誤されている姿がとても印象的でした」

内野「最初は二役だって聞いていたのが、始まってみたら“フラスコの中の小人”の声も内野さんでと言われて、『え、そうなの?』って思ったんですよね(笑)

ただ、演じ分けに関して言うと、お父様とホーエンハイムは、まったく血の通っていない者と、血の通った者という感じで、非常に対比が効いていて構図がシンプルなんです。だから、それぞれの役づくりはやりやすかったんですよね」

【山田涼介×内野聖陽インタビュー】「世界と勝負できる日本映画をつくりたい」壮大な夢に挑む作り手たちのプロフェッショナリズム
(画像=『Woman type』より引用)